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2017年10月の英語読書会

2017年10月の英語読書会では、Selma Lagerlöfの「Jerusalem Book Two “The New Way」の前半を読みました。久しぶりに山から下りてきたイングマールは、しばし里の暖かい雰囲気に浸っていた。しかし、しばらくすると村の雰囲気がどこか以前と変わってきたように感じられた。大好きだったガートルードや、その家族のことについて、以前はその噂を聞かない日はなかったほどだったのに、今は全く聞こえてこない。ヘルガムはカーリン達の支持を得て、その一派は今や教区の半分を占める勢いであった。しかしその教えは、宗派内の秩序が極めて良好であるのに反して、対外的には極めて排他的であり、改宗したものとそうでない者との間の争いが頻繁に起きていた。改宗した子供達の中には、集団で未改宗の大人を強襲するというようなことも行われるようになった。そんな教区の状況に対して、ヘルガムに対抗できるリーダーとして大イングマールの息子のイングマールに期待が掛けられているのだが、彼にはまだそのことが理解できていない。

「Book Two “The New Way”」の後半は11月5日(日)の会で読みましたが、この原稿がそれまでに間に合いませんでしたことをお詫び申し上げます。

春になって雪が消えるとすぐ、若イングマールと強イングマールは製材を始めるために村に戻ってきた。彼らは冬の間中、山に立てこもって木を切り倒し炭焼きをしていたのだった。イングマールは麓の村に帰ってくると、自分がまるで巣穴からはい出したばかりのクマのようだと思った。里では空いっぱいに明るい太陽が輝いていて、とてもまぶしく、目も開けていられないほどだった。渓流を流れるごうごうという水音や、人々の話し声がとても騒がしく思われ、また農場のあらゆる音が彼の耳には拷問のように思われた。また一方で彼は口に出したり、態度に出したりはしないけれども、その春はカバノキの若芽のように若々しさを感じられてうれしかった。

そして、再びまた心地よいベッドで寝られることや、おいしいご馳走を食べられることがうれしかった。もちろん母親のように優しく彼のことを気遣ってくれるカーリンと一緒にいられるのもうれしかった。彼女はイングマールの為に新しい服を注文した。彼女はまるでイングマールがまだ小さな子供であるかのように、台所でいろいろな美味しいものなどを作って持ってくるのだった。そして、自分が山にこもっている間に、なんと素晴らしいことが起こったのだろう。イングマールはヘルガムの教えについてはほとんどかすかなうわさしか聞いたことがなかった。しかし今カーリンとハルバーは彼らに訪れた偉大な幸福のことや、彼等や彼らの友人たちがいかに互いに助け合って神の道を歩いているかについて話した。

「あなたもきっと来たくなると思うわ」とカーリンは言った。

イングマールはそうかもしれない、だけどまずはよく考えて見なくちゃと答えた。

姉は続けた、「冬の間中ずっとあなたが帰って来て私たちと一緒に行動するようになるのを待っていたわ。だって私たち、もうこの地上に住んでいるのではなくて『天から下ってくる新しいエルサレム』にいるんですもの。」

イングマールは、ヘルガムがまだ近くにいるということを聞いてうれしいと言った。去年の夏、彼はしばしば製材所にやって来てイングマールと語り合っており、二人は良い友達になっていた。イングマールは、彼のことを、これまで会った誰よりもいい人だと思った。イングマールはヘルガムほど男らしい男に出会ったことは無かった。時には製材の仕事がとても忙しいことがあったが、そんな時彼は上着を脱いで彼らの仕事を手伝った。イングマールはその男の賢さに驚いた。彼ほどすぐに仕事に慣れる男を見たことがなかった。その時はたまたまヘルガムは数日外出していなかったが、間もなく帰ってくるはずだった。

「あなた、ヘルガムと話したことがあるから、あなたも私たちの仲間になるわよね。」カーリンは言った。イングマールもまたそのようにも思ったが、お父さんが承認したことがないことを受け入れることには少し抵抗があった。

「だって、私たちにいつも神様の道を歩みなさいと教えてくれたのはそのお父さんでしょう。」カーリンはそう言ってたたみかけた。

全ての事が明るく希望に満ちているように見えた。再び人々のいるところに帰ってくることがこんなにも嬉しいことだなんて、イングマールは今まで思ったこともなかった。ただ一つ欠けているのは、誰も校長やその奥さんや、ガートルードのことすら話さなくなったことだ、それは彼にとって一番気に掛かることだった。

彼はガートルードに1年も会っていない。去年の夏には、ガートルードのうわさを聞かない日は無かった、なぜなら誰もがストーム家のことを話していたから。古い友人たちについて何もうわさがないのは恐らくただの偶然にすぎないだろうと彼は思った。人が質問することを恐れている時、また、誰もが知りたくて仕方がないことをあえて口にしないときは、ほんのわずかなことでも口に出すのはとても神経を使うことだ。

若いイングマールが幸せで満足しているように見える一方、強イングマールの方はそうではなかった。老人は近頃不機嫌で、無口で人ともうまく付き合えなくなってしまった。

「森が恋しくなったみたいだね。」ある昼下がり、二人は別々の丸太に座ってサンドイッチを食べていた時、イングマールは彼に言った。

「全くだよ、こんなところにもう二度と帰ってきたくないよ。」老人は吐き捨てるように言った。

「いったい、この家はどこがおかしくなったんだろう。」

「よく聞いてくれたよ、あのヘルガムの奴が、そこらじゅうをめちゃくちゃにしてしまったんだ。」

イングマールは、彼はその反対に、偉大な人物になったと聞いていると答えた。

「そうなんだよ、あいつは今偉大で大きな権力を持つようになって、教区さえもひっくり返せるほどになってしまった。」強イングマールは苦笑した。

イングマールは、この老人が自分のどの親族にも全く愛情を示さないのを不思議に思った。彼は、イングマール一族とイングマール農場の他には誰をも、何をも好まなかった。だから、イングマールは、彼はもっと娘婿を支持すべきだと思った。

「僕は彼の教えは良いと思うよ。」とイングマールは言った。

「お前は本当にそう思うかい。」老人はポキッと指を折って厳しい表情で切り返した。「大イングマールはそんな風に思っただろうか。」

イングマールは、父は正義の道を歩む者は誰でも支持すると思うと答えた。

「それじゃお前は、大イングマールはヘルガムが仲間に属さないものを皆悪魔や反キリストと呼ぶことを認め、昔ながらの忠誠に従っているからといって、古くからの友人たちとの交わりを拒否すると思っているのかい。」

「ヘルガムやハルバーやカーリンたちがそんなことをするなんて考えられないよ」イングマールは言った。

「ちょっと彼らに逆らうようなことを言ってみな。彼らがお前のことを何と言うかすぐにわかるから。」

イングマールは自分のサンドイッチから大きな塊をちぎってそれを口にほおばって、物が言えないようにした。強イングマールがそんな風に意地悪く言うのがじれったかった。

「やれやれ、おかしな世の中になったもんだ。」強イングマールはため息をついた。「大イングマールの息子よ、お前がここで黙って座っている間に、わしのアナ・リサとその夫はお前の土地が生み出す富で生活している。教区の良民たちは彼らに頭を下げたりすり寄ったりしている、そして毎日あちこちでもてなしを受けている。

イングマールは何も言うことができず、相変わらずサンドイッチを食べ続けていた。しかし強イングマールはさらにまた続けて彼について話した。

「確かにヘルガムが広めている教えは素晴らしい教えだ。だから教区の半分が彼の所に集まった。これまで誰も、強イングマール自身ですらそんな大きな影響力を持ったことは無かった。彼は、自分の群れに属するものは罪人と一緒に住んではならないと教えて、子供たちをその親から引き離している。ヘルガムはただただ人を招き入れているだけだが、それによって、兄弟は兄弟を離れ、友は友を離れ、恋人は婚約者を捨てる。彼はその力を争いを起こすことに使い、あらゆる家庭に口論を起こさせた。大イングマールはそんなことにかかわって一生を終えることを喜んだに違いないさ。彼がこんなことをするヘルガムをバックアップしただろうことは疑いのないことだ。彼がそんな風にするのが想像できるよ。」

イングマールは上を見たり下を見たり、彼はこの場から逃げ出したかった。彼はこの老人が彼の考えに強く引き込もうとしていることは良く理解できたが、それと同時にその話は彼の気持ちをますます萎えさせるのだった。

「ヘルガムが素晴らしい奇跡を行ったことは否定しないよ。」老人は付け加えた。「彼の人を集めるやり方、それまで全く交流がなかった人々を集めて仲良く一緒に暮らせるようにする、そのやり方は確かにすばらしい。そして、富める者から取って貧しい者に分け与えるやり方や、お互いの持ち物を取り合わないようにするやり方を見たまえ。わしはただ、その外にいる、いわゆる悪魔の子と言われている者たちがその輪に入ることが許されていないのが気に掛かるのだ。もちろん、お前にはそんな風には思えないだろうがね。」

イングマールは老人がヘルガムのことを酷くさげすんでいうのを聞いて、困ってしまった。

「この教区には、かつては素晴らしい平和と調和があった。だけどそんなものはもう過去のものになってしまった。」老人は早口でまくし立てた。「大イングマールの時代には、わしらはダレカリアで一番フレンドリーな人々と言われるくらい本当によく一致団結して暮らしていた。しかしいまや天使は悪魔と対抗し、ヒツジは山羊と対立している。」

「製材が始まれば、こんな会話はきかなくて済むのに。」とイングマールは思った。

「わしとお前の間柄がおしまいになるのもそう遠くはなさそうだ。」強イングマールは続けた。「もしお前がヘルガムの天使に加われば、彼らはお前がわしと付き合うことを許さないだろうから。」

「ああ、もう。」イングマールはいたたまれなくなって立ち上がった。「あんたがそんな風に強く言い続けるなら、本当にそうなっちゃうよ。」と彼は警告した。

「あんたはこれを最後に、僕をぼくの仲間やヘルガムから引き離そうとするのは無駄だということを知るべきだ。ヘルガムは、僕の知っている中では一番偉大な人だよ。」

その言葉を聞いて老人は話すのを止めた。しばらくして彼は、友人のフェルト伍長に会いに町に行くと言って仕事場を出て行った。このところ長い間理屈の分かる人間と話し合ったことがなかったな、と言い捨てていった。

彼が出て行ったことでイングマールはほっとした。長い間家から離れていたものにとって、不愉快な話を聞かされるのはうれしいことではない。もっと周りの人が明るく元気であることを望むものだ。

次の日の朝5時にイングマールは製材所に降りて行った。強イングマールは彼よりも先に来ていた。

「今日ヘルガムがお前に会いに来るよ。」老人は開口一番にそう言った。

「彼とアナ・リサは夕べ遅く帰ってきたんだ。おそらく一連の集会の後、お前を改宗させるために急いで帰ってきたに違いない。」

「またその話かい。」イングマールは顔をしかめた。老人の言葉は一晩中耳の中で響いており、一体誰が正しいのか考え続けていた。しかし、身内に逆らうような言葉はもう聞きたくなかったのだ。老人はしばらく黙っていたが、突然くすくす笑い始めた。

「何を笑っているんだい。」イングマールは製材機を始動させようと水門に手を掛けながら問い詰めた。

「校長のとこのガートルードのことを思い出していたんだ。」

「彼女に何があったんだい。」

「昨日町で聞いてきたんだけど、ヘルガムはガートルードの言うことなら何でも聞くらしいよ。」

「ガートルードがヘルガムと何をしたんだって。」

イングマールはその間水門を開かなかった。機械が動き始めると話が何も聞こえなくなってしまうからだ。老人は探るように視線を彼に送った。イングマールはちょっと笑った。「あんたはいつも自分のペースに乗せようとするんだから。」

「あのバカ野郎のグンヒルドのことだよ、評議員のクレメンソンの娘の・・・」

「彼女はバカ野郎なんかじゃないよ。」イングマールは言葉を遮って言った。

「いや、何とでも好きなように言うがいい、彼女はこの新しいセクトがイングマール農場で出来たときたまたまそこにいたんだ。家に帰るなり彼女は両親に言ったそうだ。私は真の信仰を受け入れたの、だから私は両親を離れてイングマール農場で暮らさなければならないの。彼女の両親はもちろん、どうして家を出て行きたいのかと聞いた。そしたら突然、正しい生き方をしたいからと言うんだ。だけど両親にしてみれば、そんな事この家に居たって十分効果的に出来るだろうと思っている。だが、そうじゃないんだって。同じ信仰を持つ人たちと一緒に暮らさないとダメなんだと言い張るのだ。それで父親は、全員イングマール農場に住むのかいと聞いたら、いや、彼女だけだというんだ。他の人は自分の家に本当のクリスチャンがいるからいいんだと。知っての通りクレメンソンはなかなか立派な男だ。それで両親はあの手この手でグンヒルドを説得したが、彼女はいっこうに動じなかった。だから激怒した父親はとうとう彼女を拘束して、狂気が覚めるまでそこに居ろと部屋に閉じ込めてしまった。」

「あんたはガートルードのことを聞かせてくれるんだと思ったんだが。」イングマールは彼に思い出させた。

「順番に話すから黙って聞いていな。手短に話すと、次の日の朝、ガートルードとスティーナ夫人が台所で糸を紡いでいるところにクレメンソン夫人が会いに来た。

彼女を見たとき、彼らはびっくりした。彼女はいつもは幸福に満ちた明るい顔をしているのに、その日は酷く泣きはらしたような顔をしていた。『どうしたの、何があったの。どうしてそんなみじめな顔をしているの。』彼らは尋ねた。クレメンソン夫人は答えた、人が自分の一番大事な宝物を盗られた時に笑ってなんかいられるもんですか。あの人らを叩きのめしてやりたいよ。」老人は言った。

「誰なの。」イングマールは尋ねた。

「あのヘルガムとアナ・リサだよ。彼らは自ら夜中にクレメンソンのところに行ってグンヒルドをさらっていったんだ。」

イングマールは驚きの声を上げた。

「わしのアナ・リサは盗賊と結婚しちゃったようだ。」老人は言った。「真夜中に来て、グルンヒルドの部屋の窓をたたいて、どうして彼女はイングマール農場にいないのかと聞いた。彼女は両親が自分を部屋に閉じ込めたと言った。『彼らにそうさせたのはサタンだ』とヘルガムは言った。彼女の両親は、これら一部始終を聞いていたんだ。」

「そうなの。」

「そうさ、彼らは隣の部屋に寝ていて、境のドアも隙間を開けていたので、ヘルガムが娘をそそのかしているのを全部聞いたよ。」

「だけど彼らはヘルガムを追い払うことも出来たでしょう。」

「彼らはグンヒルドは自分で決めるべきだと思った。これまで随分と手を掛けて育ててきたんだから、彼女が両親の元を離れたいなんて思うはずがない。だからじっとベッドに居て、彼女が世話になった両親の元を離れるなんてあり得ないと言ってくれることを期待していた。」

「彼女は行ったの。」

「ああ、ヘルガムは彼女がついてくるまでその場を動こうとしなかった。クレメンソン夫妻は、娘はもうヘルガムに逆らえないと思って彼女を行かせた。何人かはこんな風だったよ。朝になって母親は後悔して、父親に、イングマール農場まで行って娘を連れ戻してきてほしいと頼んだ。『それはだめだ』彼は言った。『わしは何もしないよ。それにあれが自分で戻ってくるんでなければもう顔も見たくない。』それでクレメンソン夫人はすぐに学校に行って、ガートルードにお願いしてグンヒルドと話してほしいと頼んだんだ。」

「それでガートルードは行ったのかい。」

「ああ、行ったよ。彼女はグルンヒルドを説得しようとしたけれども、彼女は聞こうともしなかった。」

「僕は家ではグルンヒルドを見かけなかったけど。」イングマールはちょっといぶかしげに言った。

「ああ、今は両親の所に戻っているよ。グンヒルドと別れた後、ガートルードはヘルガムに会ったようだ。『このことは全てあの人が悪い』彼女はそう思って直接彼の所に行って厳しく叱責した。彼女は彼を打ちのめすのも辞さない勢いだった。」

「ああ、ガートルードはまともに話ができるんだ。」イングマールは満足げに言った。

「彼女はヘルガムに言った。あんなふうに夜中にこそこそ隠れていって若い女の子を無理やり連れだすなんてキリストを伝道する者のすることじゃない。それじゃまるで異教徒の戦士だ。」

「ヘルガムはそれに対して何て言ったの。」

「彼はしばらく静かに聞いていたが、素直に彼女の言う通りだと認めたよ。ちょっと性急すぎたと。そして午後にはグルンヒルドを両親の元に送り返して、全てを丸く収めたんだ。」

イングマールは笑顔で老人を見上げて言った。「たいしたもんだね、ガートルードは。ヘルガムもちょっと変わっているけどいい人だ。」

「お前はそんな風に考えるのかい。どうしてヘルガムはガートルードにはそんな風に素直に従うのか、不思議に思わないのかい。」

イングマールはこれには答えなかった。

老人はしばらく考えてまた言った。「村にはお前がどっちにつくか知りたがっているものがたくさんいるよ。

「僕がどっちにつくかなんて関係ないでしょう。」

「一つだけ思い出してほしいんだけど」老人は言った。「この教区では誰かリーダーとして尊敬できる人が必要なんだ。しかし今や大イングマールはいなくなってしまったし、校長も人々に対する影響力を失ってしまった。牧師さんもお前の知っている通り指導者には向いていない、それにお前がいつまでも後ろに引き下がっているので、皆はヘルガムのところに行って彼について行こうとしている。」

イングマールはひどく疲れた様子で手を下ろした。「だけど僕には誰が正しいのか分からないよ。」と彼は抗議した。

「皆はお前にヘルガムから救ってほしいと思っているよ。お前も分かっていると思うが、俺たちは冬の間家から離れていることで、多くの不愉快なことに会わなくてすんでいる。この改宗の狂気とヘルハウンドとか悪魔とかに慣れる前は、人々にとってそれは何か不気味なものだっただろう。そして、最悪なのは改宗した子供たちが説教をし始めたことだ。」

「子供まで説教をし始めているってかい。」イングマールは信じられないといった風に話した。

「ああ、本当だよ。」老人は答えた。「ヘルガムは子供たちに、遊んでいないで神様に奉仕しなさいといって、まず年上の者から改宗させた。彼らは道端で待ち伏せして、何も知らない通りがかりの人にこんな風な言葉を浴びせて突然襲い掛かる『悪魔との戦いを始めませんか。あなたはまだ罪の中に住み続けるつもりですか。』」

若イングマールは強イングマールが聞いてきた話を信じたくなかった。「それは全てフェルトの奴があんたの頭に吹き込んだに違いない。」

「だけど、これこそわしがお前に話したかったことだ。」強イングマールは言った。「フェルトもやられたのだ。こんないたずらがイングマール農場で生み出されていることを思うと、恥ずかしくて皆に顔向けも出来ないよ。」

「彼らはフェルトに何かおかしなことをしたのかい。」イングマールは尋ねた。

「あの若造たちの仕業だよ、忌々しい。ある晩、他に何もすることがなかった時、彼らはフェルトを改宗させることを思いついたんだ。もちろん彼らはフェルトが大罪人だと教えられていたからだ。」

「昔、子供たちは皆フェルトのことを魔法使いやトロルと同じくらい怖がっていた。」イングマールは思い出した。

「もちろん子供たちも怖かったさ。だけど何か勇ましいことをしてみようと思ったに違いない。ある晩彼らは、フェルトが小屋で夕食の雑炊をかき混ぜているところに押し入った。扉を開けて髭もじゃで鼻が曲がり、鋭い目つきの老伍長を見たとき、彼らはひどくびっくりした。そして一番若い2人は逃げ出した。十数人が入っていって、老人の周りに輪になって跪き、歌を歌って祈り始めた。」

「彼は子供たちを追い払わなかったのかい。」イングマールは聞いた。

「そうしてくれりゃ良かったものを。」老人はため息をついた。「伍長に何が起こったのかわしには分からん。あわれにも奴は老齢の孤独と寂しさでくよくよ座って考え込んでいたに違いない。そしてまた、訪れたのが子供だったからだろう。子供たちがいつも彼を恐れていたことが老人には寂しさの原因だったに違いない。子供たちの涙できらきら光る眼で見上げられたら、彼はなす術もなかった。子供たちは、彼が自分たちのところに飛んできて殴りかかるのを待っていた。彼らは歌い、祈り続けていたが、彼が動いたらすぐに中断して逃げ出す用意をしていた。間もなく二人の子供はフェルトの顔が歪んでくるのに気が付いた。彼らは『今、彼は跳びかかって来るぞ』と思い、立ち上がって逃げようとした。しかし老人が見える方の目を瞬くと、涙がこぼれて頬を伝わった。『ハレルヤ!』子供たちは叫んだ。そっから先はわしが以前話した通りだ。フェルトはそれで完全にまいってしまった。今や彼はあちこちの集会を追いかけること以外何もしなくなった。そして断食をし、祈り、神の声を聞くのに夢中だ。

「僕には何か問題があるようには思えないが」イングマールは言った。「ヘルガムが彼をキャンプに入れた時、フェルトは酒で死にかけていたくらいだ。」

「お前は友人が捨てるほど沢山いるから、これぐらいの事じゃなんてことないだろう。子供たちが校長を改宗させたら、きっと面白いと思うに違いない。」

「あの幼い子供たちがストームに襲い掛かるなんて想像もできないよ。」イングマールは驚愕した。強イングマールが教区がひっくり返されるかもしれないと言っていたことは、もしかしたら本当にあり得るかもしれないと思った。

「だが、彼らは本当にそれをやったんだ。」強イングマールは答えた。「ある日の夕方、ストームが教室で書き物をしている時、20人ほどの集団でやって来て彼に説教を始めた。」

「それでストームはどうしたの。」イングマールは笑いをこらえきれずに聞いた。

「彼は初めひどくびっくりして口を利くことも何かをすることも出来なかった。しかし、幸いなことに、ちょっと前にヘルガムが来ていて、台所でガートルードと話をしていたんだ。

「ヘルガムがガートルードとだって。」

「そうだよ、ヘルガムとガートルードはグンヒルドの一件で彼女のアドバイスを受けて以来、親友になったんだ。」教室での騒ぎを聞きつけた時彼女は言った。『何か新しい事件がちょうど始まったところのようですね、ヘルガムさん。子供たちがこれから校長を説得するところのようですわ。』ヘルガムは笑った。彼はそんなことは馬鹿げたことだと分かっていたからだ。そして、すぐに子供たちを退散させ騒ぎを静めた。」

(by Hide Inoue)

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