英語読書会報告(2016-7月)

2016年7月の英語読書会では、

Selma Lagerlöfの「Jerusalem Book One The IngmarssonsⅡ&Ⅲ」を勉強しました。

II  2週間後、イングマールはブリタを迎えに行くために、馬具を洗ったり、馬車をペンキで塗りなおしたりしていた。正直なところ、ブリタをちゃんと迎え入れることができるかどうか不安でいっぱいだった。

そこに、道路のほうから馬車の音が聞こえてきた。彼はそれが誰だかすぐわかった。上院議員のブリタの父親がベルグスコグからやってきたのだ。母親のマーサはかまどに新しい薪を入れ、コーヒーの準備を始めた。

ブリタの父親は庭先に馬車を乗り入れると、馬車の上から言った。「わしは、家には入らんぞ。イングマールに一言言いに来ただけだ。これから教区のミーティングがあるんで、わしは急いでるんだ。」

イングマール:「母は今コーヒーを入れているところですけど。」

議員:「ありがとう、でも遅れないようにいかなくちゃならんのだ。」

イングマール:「この前来られてから、久しぶりですね。」 イングマールは丁重に迎えた。

マーサ夫人:「コーヒーを召し上がらないでお帰りになるなんてことはございませんよね。」

イングマールは馬車の前掛けのボタンを外した。議員は馬車を降りて言った。

議員:「マーサ夫人直々のお願いとあらば、断わるわけにはいくまい。」

平凡でどこかぎこちないイングマールやその母親と違って、議員は背が高く人を引き付ける容貌を持っている。しかし、彼はイングマール家の人々を大変尊敬しているので表向きはイングマール家のしきたりに従ってふるまっている。娘に対しても、いつもイングマールの見方をしていた。

マーサがコーヒーを持ってくると、議員は用向きを話し始めた。

議員:「ブリタについて、我々の考えを伝えよう。」

マーサが手に持っているコーヒーカップがカタカタと震えた。そして一瞬重苦しい雰囲気が漂った。

議員:「我々にとって一番いいのはブリタをアメリカにやることだ。」

そして同意を求めるために少し間をおいた。しかし、反応がなかった。

議員:「もう切符も手配してある。」

イングマール:「彼女はまず家に帰すべきじゃないでしょうか。」

議員:「今さら家になんの用があるというんだね。」

イングマールは再び目を閉じて沈黙した。

マーサ:「着替えだって必要じゃないかい。」

議員:「必要なものはすべてトランクに詰めて、レーヴベルグの宿においてある。」

イングマール:「そこでお母さんと会うんですね。」

議員:「いいや、会いたいかもしれないが会わないほうがいいと思っている。」

イングマール:「そうかもしれませんね。」

議員:「切符も、金も全てレーヴベルグに用意してある。だから、イングマールはこのことについてこれ以上かかわらなくてよろしい。」

マーサは座り込んで、無言でエプロンの中を見つめていた。

議員:「イングマールはほかのところから新しい嫁を貰ってくれ。マーサひとりじゃこの大きな農場を切り盛りしていくのは大変だろう。それにもう年なんだから、なあ、イングマール。」

議員はちょっと間をおいて彼らが自分の言っていることがちゃんと伝わったかどうか確かめた。

議員:「妻と私はすべてのことを正したいんだ。」

イングマールは内心ほっとした。ブリタがアメリカに行ってしまえばもう彼女と結婚しなくてよくなる。殺人を犯した女は確かに古いイングマール家の嫁にはそぐわない。しかし、イングマールは黙っていた。それを聞いてどんなにうれしく思ったかをすぐに口に出してしまってはまずい。そうではなくて彼が考えていることは何かということを言わなければならないと思った。

議員は、この古い考えの人たちには考える時間が必要だと思ったので、静かに時を待った。

マーサ:「ブリタは彼女の罪を贖った。今度はこちらの番だ。」

マーサは、事態を円満に収めてくれたことに対して、イングマール家は議員のどんな要求にも応える用意があるというつもりであった。しかし、イングマールは母の考えとは違う意味の説明をした。

彼は突然眠りから覚めたように話し始めた。「もし父が生きていたらこういうと思う。『神の裁きをないがしろにしてはいけないよ。ブリタに全ての罪を負わせてお前だけ自由になるなんてことはありえない。もし彼女の父親が今後もお前とうまくやっていくために彼女を投げ出したとしても、お前は神の導きに従わなければいけないよ』 と。僕は父がいつも僕のことを見守ってくれていると信じているよ。ブリタの父親がここに来たのも、すべてのことをブリタの所為にしてしまうことが、いかにずるいことかを僕にしっかり解らせるために父が呼んだに違いない。この数日、僕がブリタを迎えに行くことにあまり気が進まないでいることに父は気付いたに違いない。」

イングマールはコーヒーにブランデーを少しいれて、議員と乾杯した。

イングマール:「議員さん、今日はわざわざ遠くから来てくださってありがとうございました。」

Ⅲ  イングマールは門の両脇のカバノキの周りで忙しく働いていた。木の周りに足場を組み2本の木の先端を引き寄せてアーチ状にした。

マーサ:「どうしてそんな風にするんだい。」

イングマール:「ちょっと雰囲気を変えてみたかっただけだよ。」

玄関のドアが用心深く開けられて、一人の老婦人が大きな籠を天秤棒で担いで入ってきた。いつもと変わらない挨拶をしてからドアの横の椅子に座って、籠の蓋を開けた。一つの籠にはラスクと菓子パンが詰められており、もう一つは香辛料の効いた焼きたての食パンが入っていた。マーサはすぐに老婦人のところに行って値踏みを始めた。彼女は普段はなかなかのしまり屋なのだが、この手のスイーツには結構目がなかった。

ケーキを選びながらマーサは老婦人と話し始めた。物売りをして歩く女性は一般的にそうであるように、彼女も話好きである。

マーサ:「カイザ、あんたは思慮深い人だから信頼できるよね」

カイザ:「勿論よ、人の噂をうっかり漏らしたりしたらすぐに取っ組み合いの喧嘩になっちゃうんだから。」

マーサ:「だけど、カイザ、あんたは時々隠しすぎているんじゃないかい。」

老婦人は顔を上げた。マーサが何を言いたいかは明らかだ。

カイザ:「ごめんなさい。あんたにまず一番に話さなきゃならないことをベルグスコグの議員さんの奥さんに話してしまった。」

マーサ:「やっぱりあんた、議員さんの奥さんには話していたんだね。」

マルタは「議員さんの奥さん」に力を入れて言った。

イングマールはドアが開いたのでびっくりして目が覚めた。誰も入ってきた様子はないのにドアは開いたままだった。それが自然に開いたのか、誰かが明けたのか彼にはわからなかった。ひどく眠かったので寝たままでいると、隣の部屋から話し声が聞こえてきた。

マーサ:「カイザ、あんたはどうしてブリタがイングマールを好きじゃないと思うんだい。」

カイザ:「みんなは、好きでもないのに親がそうさせたんだと言ってるよ。」

マーサ:「はっきり言いなよカイザ、わたしゃ何を言われても平気だから。」

カイザ:「言っちゃなんだけど、ベルグスコグに行くとブリタはいつも泣いていたよ。いつかキッチンで二人だけでいるとき、わたしゃ言ったよ、『ブリタ、あんたの夫になる人はいい人だよ。』 そしたら彼女、からかわないでよって顔をして、『よく言うよ、カイザ。』 私の顔が、醜いイングマールに見えたみたい。わたしゃいつもイングマール家の人たちを尊敬してるから、そんなこと考えてもみなかったんで、ちょっと苦笑してしまったんだけど。そしたらブリタは私のことを睨み付けて、『そう、わかったわ。』 といって自分の部屋に引き込んで心臓が破裂するかのように激しく泣いたんだ。わたしは自分に言い聞かせた、『そのうちわかるさ。イングマール家の人たちは本当にいい人達なんだから。』 わたしゃあそこの両親が何をしたかは知らないよ。イングマールが私の娘にプロポーズしたとしたら、彼女が『うん』というまで気が気じゃないけどね。」

イングマールは、母がわざと聞こえるようにしているんだと思った。母は明日僕が町に行くかどうか心配しているんだ。母は僕がブリタを連れて帰ることを望んでいる。まさか僕がそんなことができないほど臆病だとは思ってないみたいだ。

カイザは続けた、「その次にブリタに会ったのはここに来てからだった。その時はお客さんがいっぱいだったのでブリタと話をする時間がなかった。しかし、わたしが林のところまで来たときブリタが私を追いかけてきて言った。

ブリタ:『カイザ、最近ベルグスコグに行った?』

カイザ:『一昨日行ってきたわよ。』

ブリタ:『そう、一昨日行ってきたんだ。私、もう何年も家に帰ってない気持ちよ。』

そのとき彼女に何て話したらいいのかわからなかったよ。ほんの些細なことでも泣き出しそうな雰囲気だったんだもの。

カイザ:『あんた、いつでも家に帰れるんじゃないの。』 といったら、

ブリタ:『もう2度と家には帰らないわ。』 という。

カイザ:『帰ったほうがいいよ。今、一番いい季節なんだから。森にはいろんなベリーがあるし、ワートルベリーなんかいまが最高よ。』 といったら、彼女、目を輝かせて、

ブリタ:『ほんと?もうワートルベリーの季節なの?』

カイザ:『本当よ、だから1日だけでも家に帰ってベリーをおなか一杯食べて来たら?』

ブリタ:『いいえ、やっぱり行かないわ。1度家に帰ったら2度とここに帰ってこれない気がするの。』

私は言った、『イングマール家の人たちは素晴らしい人たちだとみんな言ってるよ。一緒に暮らす価値のある正直な人たちだと。』

ブリタ:『そうね、彼らなりのやり方でいい人だわ。』

カイザ:『彼らはこの教区で一番いい人達だ。それに公正だ。』

ブリタ:『じゃ、力づくで嫁をとるのは不公平じゃないんだ。』

カイザ:『彼らは賢い。』

ブリタ:『だけど、何も教えてくれない。』

カイザ:『いろいろ教えてくれてるんじゃないの。』

ブリタ:『あの人たちは、必要最小限の事しか教えてくれないわ。』

帰りがけに、ふと思い出して、『結婚式はどっちでやるんだい?』 と聞いてみた。

ブリタ:『こっちでやろうと思っている。こっちのほうがスペースがいっぱいあるし。』

私は、『結婚式はあまり先に延ばさないほうがいいよ。』 と警告した。

ブリタは、『1か月以内に結婚式を挙げるつもりよ。』と答えた。

しかし、別れ際に、イングマール家は今年ほとんど収穫がなかったことを思い出したので、私は『結婚式は今年はないと思うよ。』 と言ったところ、ブリタは、『もし、そんなことになったら私は川に飛び込むわ。』 と言っていた。」

カイザ:「1か月後、私は結婚式が延期されたことを聞いて、これはまずいと思ってすぐにベルグスコグのブリタの母親のところ飛んで行って言った。『イングマールのこのやり方はまずいよ。』 と。そしたら母親は、『私たちはイングマール家を信頼しています。娘が良くしていただいているのでとても感謝しています。』 と言っていた。」

イングマールは思った、「誰かがこの農場からブリタを連れ去るなんてことはないんだから、お母さんはそのことで心を煩わすことはない。あのアーチをみても驚くことはない。あれは、男が神様に向かって『僕はやりたいんだ。神様、僕がやるところをしっかり見ていてください。』 という意思表示の一つに過ぎない。だけど、実際にやるかどうかは別問題だ。」

カイザは続けた:「最後にブリタに会ったのは冬のひどい大雪の日の後だった。森の中の狭い小道を通って行かなくちゃならなかったから、とても大変だった。すると間もなく誰かが雪の中に座っているのを見つけた。ブリタだった。『一人でここまで来たの』と聞いたら、『ええ、ちょっと散歩に来たの』と言ったの。私はびっくりして彼女を見つめたわ。彼女がそこで何をしていたか想像もつかなかった。それから彼女はこう言った、『この辺に高い崖がないかしらと思って探していたの。』私はもうびっくりしたわ、まるで人生に疲れきってしまった様子だった。

カイザ:『崖から身を投げるつもりだったの?』

ブリタ:『そうよ、もし高くて急な丘が見つかったら私きっとそこから身を投げて見せるわ。』

カイザ:『そんなこと言っちゃだめよ。あんたは十分愛されているじゃない。』

ブリタ:『カイザ、私って悪い女ね。』

カイザ:『そうかもしれないね。』

ブリタ:『私って、生きているととんでもないことをしそうなの。だから死んだほうがましなのよ。』

カイザ:『そんなことないわよ。』

ブリタ:『あの人たちと一緒に住むようになった途端におかしくなったわ。』

そう言って私に迫ってきて、恐ろしい目をして叫んだの。

ブリタ:『あの人たちの考えていることは、どうやって私をいじめようかということばっかりだわ。だから私もどうやって仕返しをしてやろうかといつも考えているの。』

カイザ:『そんなことないわよ。あの人たちはみんないい人よ。』

ブリタ:『あの人たちはいつも私に恥をかかせようとしているわ。』

カイザ:『あんたはあの人たちにそう言ったのかい?』

ブリタ:『いいえ、そんなことは言わないわ。ただ、私はどうやったら彼らと対等に付き合っていけるか悩んでいるのよ。彼のお気に入りのあの家を燃やしてやりたいとか、あの目の周りが白く、年取って醜い牛をどうやって毒殺してやろうか、あれも彼のものだから。』

カイザ:『吠える犬は噛まないというけど。』

ブリタ:『彼に一矢報いないと私の心に平安はないわ。』

カイザ:『あんた、自分が何を言っているのかわかっているの?そんなことをしたら、あんたの心に一生平安なんか来ないよ。』

そう言ったら彼女はまた泣き出した。しばらくして、泣き止んでぽつりと言った。『悪い考えが次から次へと浮かんでくるのよね。

それから私は彼女をつれて家に帰った。別れ際に『今日のことは誰にも言わないから、早まったことをしちゃだめだよ。』と約束したんだ。そうはいってもわたしゃこれは誰かに話さなくちゃいけないと思ったよ。だけど、あんたがたのようなお偉い方々に話すのはちょっと気が引けたのさ。」

そのときちょうど昼休みの終わりを告げる鐘がなった。マーサは突然カイザの話を遮った。

「カイザ、あんたはイングマールとブリタを元の鞘に戻すことができると思うかい?」

「何だって?」カイザはびっくりした。

マーサ:「つまり、もしブリタがなんかの都合でアメリカに行かなくなったとしたら、彼女は彼を受け入れるだろうか?」

カイザ:「ありえないね。」

マーサ:「じゃ、あんたは彼女はノーと言うと確信してるってことだね。」

カイザ:「そうだよ。」

イングマールは足を下ろしてベッドの横に座っていた。

イングマールは思った、「イングマール、これでお前に何が必要かが分かった。そして、明日は町に行くんだ。」そして、自分に反対しているものをたたきのめすように、こぶしでベッドの端をたたきながらつぶやいた。「お母さんはブリタが僕の事好きじゃないと言って、僕が町に行くことに反対しているんだ。」

イングマールは決心した。「とにかく僕はもう一度チャレンジするんだ。僕らイングマールの者はことがうまくいかないときは一からやり直すんだ。男だったら自分のせいで女性がおかしくなってしまったのを放っておくわけにはいかない。」

自分が負けるなんて全く考えなかったイングマールは、とにかく正しくしなければならないと決心した。「僕がここでブリタを幸せにできなかったなんてことになっては絶対にいけないのだ。」ベッドの柱に一撃を加えると、彼は仕事に戻った。

「カイザをここに寄越したのは、僕を町に行かせるためにお父さんが仕組んだものに違いない。」

8月の読書会はお休みです。

次回は9月4日(日)14:00~「Book One The Ingmarssons Ⅳ」を読みます。

いよいよブリタが刑務所を出てきます。イングマールとブリタはうまくよりを戻すことができるのでしょうか。会の進行は特に当番を決めていませんので、どなたでも、いつからでも気軽に参加できます。2人のnative speakerがサポートしてくださいます。テキストが入手し難い状況にあり、ご迷惑をおかけしております。kindle版、iBook版もご利用いただけます。ページレイアウトがちょっと違うという難点はありますが、辞書機能や、ネット検索機能も利用できますのでなかなか便利と思います。

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