· 英語読書会

英語読書会(10/2)報告

2016年10月の英語読書会では、Selma Lagerlöfの「Jerusalem Book Two At The Schoolmaster’s」を勉強しました。

前回は、特に愛しているということではないが、神様の道に従いなさいという亡き父の教えに導かれて、刑務所から出所したばかりのブリタを迎えに行ったイングマール。二人はその足で教会に行ったが、そこでは、予想通り群衆の冷ややかな視線に悩まされる。いたたまれなくなって礼拝が終わらないうちに教会を飛び出した二人。家に入ろうとしたが、母親の目はやはり冷ややかだ。行き場を失って二人は森に逃げ込む。そこでイングマールは初めて「人を愛する」とはどういうことなのかを悟った。そこに行商人のカイザがやって来て、「二人が教会に来たことは、どんな説教よりも素晴らしい福音を伝えるものだ」という牧師さんのメッセージを伝える。母親もそれによって心を開き、イングマールは教会の中でも重要な働きを担う人となる。

1880年代の初期には、イングマールソン一族の住んでいた教区では、信仰に対する新しい考え方とか、新しい礼拝の方式を取り入れようと考えるものはいなかった。他のダレカリアの教区では、そのような新しい教派があちこちで起こり、その会派の人たちは、川や湖に行って体を沈めるという新しい洗礼の儀式を行っていることが知られた。しかし多くの人々は嘲笑するように「そういうことは他の地方ではあっても、我々の教区ではありえないだろう。」と言っていた。

この教区では人々は古い習慣を固持していた。その一つが、日曜日に教会に行くことであり、よほどの事情がない限り皆、必ず教会に行った。それほど多数の人が教会に集まるのは、特別優れた牧師がいるからでも、聖書に書かれていることをわかりやすく解説する能力のある人がいるからでもない。人々は神を賛美しに教会に行くのであって、良い説教を聞きに来るわけではなかった。家路につくとき、身を切るような冷たい風の中を歩きながら、「このような寒い日にも、あなたが教会に来たことを神様は見ておられるでしょう。」それが教会に行く最大の理由であった。もし、牧師が毎度毎度お決まりの説教しかしなかったとしても、それが牧師の職務であったので、それは彼の落ち度というわけではなかった。

人々は教会の鐘を聞くときは必ず主の祈りを祈り、また、夕べにアンジェラスの鐘(受胎告知の鐘)が鳴り始めると、男は帽子を取り、女性は身なりを正し主の祈りを唱え終わるまで、みな静かにその場に佇むのであった。鐘が鳴り始めるとすぐさま、大鎌は地に置かれ、犂は畝の途中で耕すのを止め、種まき車も種をまくのを止める。それはまるで彼らは、その時主が、偉大な力と真実をもって、教区の上にかかる夕暮れの雲の上を駆け巡り、すべての民の上に恵みの息吹を吹きまいていると信じているかのようだった。

この教区にもよく見習い説教者が派遣されて来たが、彼らは言った「あそこの人たちは、目覚めさせられたくない人たちばかりだ。」見習い説教者ばかりでなく、近隣の教区のほとんどのいわゆる「目覚めた魂」はイングマールソンとその教区のメンバーのことを「偉大な罪人たち」と呼んで、そこでは教会の鐘は「汝ら罪に眠れ、汝ら罪に眠れ」と鳴っていると評した。よそ者からそんな風に言われるのを聞いて皆は一様に激怒したが、反論する者はいなかった。ただ、校長と2,3の学識のある農夫だけが、仲間内で「あの牧師は説教ネタを一つしか持っていないらしい。神の知恵と支配についてだ。だがそれだけでは新興の会派の人たちにちょっと攻められたらすぐに崩れるだろう。」と話し合っていた。

この教区には大学で勉強した者はいなかった。今の校長のストームにしても、ただの農家の出身の者が、ちょっと自学自習で勉強したものだった。しかし、彼は有能な男で、100人の子供を片手で采配できる能力は十分ある。この30年あまり、彼はここで唯一の先生であり、みんなから一目置かれていた。校長は、自分こそこの教区の信者達の精神的な繁栄の責任者だと思っており、それ故ちゃんとした説教のできないものを牧師にしておくことはいかがなものかと思っている。ただ、今は平穏を保つため、それを新しい洗礼を導入するかどうかという問題にすり替えているのだ。しかし、教会の運営についても変化が現れ始め、個人の家庭に集まって礼拝を行っている人々がいるということを知ると、もうじっとしていられなくなった。彼自身は金持ちではなかったが、幾人かの市の有力者を説得してミッションハウスを作るための資金を集めた。彼は言った、「いいですか、私はこれまで守ってきた信仰をより確かなものにするために教えたいだけです。見習い牧師が新しい洗礼の方式や、新しい聖礼典の儀式を持ち込んできたとき、何が本当の教義であり、何が偽物なのか見分けられる人がいなかったらどんなことになるか、それは明らかだ。」

校長のストームは60代の男であった。彼はこれまでいろいろな仕事や責任が持ち掛けられたが、いつもリーダーとして働いてきた。彼と牧師には大きな違いがある。ストームはダレカリアで一番の大男であり、頭はふさふさとした黒髪で覆われ、肌は日に焼けてブロンズに輝き、肉体は強靭で彫が深かった。一方、牧師の方は、痩せて小柄で頭は禿げていた。彼は、若い時は周りの人から稀にみる天才だと言われ、彼自身もそう思っていた。しかし、学生時代、いわば「勉強しすぎて」頭がおかしくなってしまったのだ。それ以来もとに戻ることはなく、自分が廃人になってしまったことも忘れてしまったのだ。

校長はいろんな人に好かれていたが、牧師とも親しかった。彼と牧師は、互いに話題が無限にあるかのように、学校と牧師館の間をしばしば一緒に歩いた。また、牧師は夕べのひと時、よく校長の家に立ち寄り、居心地のいいキッチンの暖炉の前で校長婦人のスティーナとおしゃべりを楽しんでいた。実は彼の妻は病弱で床についてばかりいるので、家の中は片付いていなくて安らぎがなくうっとうしかったのだ。

ある大雪の日、牧師はいつものように校長の家に来た。ここに来ると、半ば凍り付いた身も心も暖かい部屋の暖炉の火で癒されるのがうれしかった。彼はいつも饒舌であった。夕べのひと時、この世のあらゆる話題について彼ほど気楽にまた確信をもって話せるものはいなかった。だからそれがあの退屈な説教者と同一人物だとはとても信じられない。しかし、ひとたび話題が信仰のことになると、顔を赤らめ、言葉に詰まり、偶然「神がこの世をうまく治めてくださる」というチャンスがない限り、確信的なことは何も言えないのだった。

牧師が気持ちよくおしゃべりを終えたとき、校長は突然彼の方を向いて嬉しそうに言った。「あなたに話したいことがある。僕はミッションハウスを作るんだ。」牧師は顔を真っ青にして椅子に座り込んだ。「何を言っているんだい。ストーム君。君は本当にここにミッションハウスを作るつもりなのかい?そしたら私や教会はどうなっちゃうんだい?私はもうお払い箱ということかい?」「教会や牧師は今まで通り必要さ。」校長はきっぱり言った。「僕の考えでは、ミッションハウスは教会により多くの繁栄をもたらすことが目的だ。今国中でいろんな会派が生まれてきており、教会は助けを求めているんだ。」「ストーム君、君は私の友達だと思っていたのに。」牧師は悲しそうに言った。たった今まで自信に満ちて幸福だったのに、いまや全く意気消沈してしまった。

校長夫人は、夫がミッションハウスの話している間、それが如何に牧師のプライドを傷つけているかを知っていたので、夫にもうその話をしないようにと何度も無言の合図をしたが、校長は一向にかまう様子もなく話を続けた。校長はさらにわかりやすくポイントをついて説明した。「いいですか、異端者たちは間もなく教区に侵入してくるだろう。だから教会の礼拝のように形式的なものではなくて、もっとインフォーマルな方法で人々に語る場所が必要なんだ。そこでは人々は自分で聖書を持ち、聖書の全体を解説し、難解な部分を人々にわかりやすく説明するのだ。それはオオカミから人々を守ることだ。」「ストーム君、オオカミを招き入れようとしてるのは君の方じゃないのかい。」しかし、牧師が信頼していたイングマールまでもがこの計画に賛成していることを知って絶句した。牧師は必死になってこの計画を取り下げるように懇願した。ストームはしばらく考えていたが、「牧師さん、やっぱりミッションハウスを止めるわけにはいかないよ。」

憔悴の内に牧師はオーバーを着、帽子をかぶって帰宅につこうとしたとき、部屋の隅で遊んでいる校長の娘のガートルードに目が留まった。彼女はブロックやガラスのかけらで何かを作っていたが、その顔は喜びで輝いていた。「何を作っているんだい、ガートルード?」「もうちょっと早く来ればよかったのに。私、すごく素敵な教区を作ったのよ。教会も学校もあって・・・。だけどもう壊しちゃった。私たち昨日、学校でエルサレムのことを本で読んだの。だからエルサレムを作るために教区を壊したの。」

12歳の少女ガートルードのこの言葉に、何か予言的なものを感じた牧師は、その言葉を心の内で何度も反芻した。そして、目を輝かせて校長のところに戻ってきて、いつもの快活な調子で言った。「僕はもう君のことを怒ってはいないよ。君は君がやるべきことをやっているだけだ。僕は神の道について一生考えてきたが、いまだ完全に理解できたようには思えない。僕は君がやろうとしていることが理解できないが、君は君が必要だと思っていることをやっているということは解ったよ。」

次回は11月6日(日)14:00~「Book Two “And They Saw Heaven Open”」を読みます。ミッションハウスができたその年の春は異常気象で大雨が降り続き、雪解けの水と重なってダル川の水位は上昇し、上流のどこかで氾濫が起きたようです。大木や壊れた家屋、桟橋などが流れてきました。話はどのように展開するのでしょうか。

会の進行は特に当番を決めていませんので、どなたでも、いつからでも気軽に参加できます。2人のnative speakerがサポートしてくださいます。テキストが入手し難い状況にあり、ご迷惑をおかけしておりますが、kindle版、iBook版がご利用いただけます。また当日の対訳コピー(完全なものではありませんが)を用意させていただいていますのでお気軽にご参加ください。

(by Hide Inoue)

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